もちろん、罪悪感はありました。
でも当時の私には、お小遣いの方が重要でした。
ときどき、兄のお仕置きを手伝うようになったのです。
別の日には、こんなこともありました。
当時、私には付き合っていた彼氏がいました。
どうしてもクリスマスに、彼氏にプレゼントしたいブランドの財布があったのです。
でもお金遣いの荒い私には、少し貯金が足りませんでした。
うちは裕福な家庭なので、私がアルバイトをすることは、母が許しませんでした。
「12月だけ、お小遣いを上げていただけないでしょうか?」
私は母にそう相談しました。
「お小遣いは多く渡してあるでしょう? 自分でやりくりなさい」
母は何か不動産の書類を読みながら、素っ気なくそういいます。
「それでは足りません。
もしダメなら…アルバイトさせてください」
「論外ね。
高校生の本分はお勉強です。アルバイトなんて必要ありません
あなたも少しは勉強したらどうなの? 京太さんを見習いなさい」
またも、素っ気なくそう答える母。
私は歯ぎしりします。
しかし、もう1つだけ奥の手がありました。
「あの……
お兄ちゃんのお仕置きを手伝うので…、来月だけお小遣いを増やしてください」
ようやく母の書類を読む手が止まります。
ここ数カ月、兄の成績が伸び悩んでいるのを、私も食卓で聞いて知っていました。
今日、返却された模試の成績では、志望校の判定が A+ から、A- ランクに落ちてしまったらしいのです。
母は、眼鏡を外してデスクに置くと、ゆっくり私の方に顔を上げました。
「…..わかりました。
京太さんも、私のお仕置きには少し慣れてしまって、緊張感がないのかもしれません。
あなたにお仕置きしてもらった方が、気が引き締まるかもしれないわね」
私は罪悪感を覚えつつも、こうして彼氏へのプレゼント代を獲得したのでした。